名機DD-2の後を継ぐディジタルディレイ DD-3
DD-3 Digital Delayは、世界初のデジタルディレイとして登場し名機として名高いDD-2の後継機種です。
実を言うとDD-2自体の販売期間は3年弱と短命。登場時に楽器業界・エフェクター業界に与えた衝撃と、エフェクターとしての優秀さを考えると明らかに短すぎる。
それもそのはず、実は後継機種の本機DD-3と前機種であるDD-2は中身はほぼ同じで、型番だけが変わっているようなものだったのです。
そのために新機能も特にありませんし、MODEも増えてません。肝心のディレイタイムも12.5ms~800msと全く同じ仕様です。
実はDD-3 Digital DelayはDD-2とほぼ同じもの!?
前述の通り、DD-2の後継機種である本機DD-3 Digital Delayも機能・性能・仕様が全く一緒。
違いといえばACアダプターの位置が変わり、配線周りに若干改良が入っているくらいでしょうか。
あとジャック部分の表記がちょっと違うだけですね。
DD-3は1986年に発売で今でも新品で販売されている現行品ですから、かなりのロングセラーと言えます。
BOSSはなぜDD-2をそのままDD-3にしたのか
それにしてもなぜこんなことになったかというと、別段BOSSが商品開発に手を抜いたからなわけではありません。
(手抜いてたらDD-2なんて化け物を30年以上前に造れるわけがない)
DD-2の発売当時はまだデジタル機器自体が黎明期で、デジタルディレイの根幹となるパーツが高価でした。
が、技術の進歩か量産効果かものすごい勢いでパーツ価格が下がったこともあり、DD-2は発売からそう経たずない内に価格設定を29,800円から24,800円に値下げをしていたんです。
しかしその後もパーツ価格が下げ止まらず、原価がみるみる安く…
普通の企業なら「 儲けた儲けた、しめしめ 」と考えるかもしれません。まだコンパクトエフェクターサイズのデジタルディレイはDD-2しかないですから、ライバルもいませんし。
が、BOSSそこで再度値下げをすることを検討します。
なんて良心的なんだ。素晴らしい!
しかし、BOSS社内で検討した結果、同じ機種を短い期間で何度も値下げをするのはどうなんだ、という結論に至ります。
売る側としても迷走している感がぬぐえませんし、値下げ前に高い価格で買ってしまった人たちもよくは思わないでしょう。
そこで、本体の機能・スペックどころか回路にも特に変更はないままに型番をDD-3に変更し価格を下げて発売したのです。
製造コストの下落に合わせて安くしたり既に買った人たちのことを考えたりと、なんだか色々と良心的だなぁ、と思う技術大国BOSSらしいエピソードです。
DD-2 = DD-3?
つまり、DD-3を買えば世界初のコンパクトサイズデジタルディレイのサウンドを楽しめる…
と言いたいところですが、実はDD-3は1986年の発売以来、二度ICチップ周りを中心にマイナーチェンジが行われています。
- 初代のICタイプのDSPチップバージョン(DD-2と同じ)
- DSPチップがICからLSIに変更したバージョン
- 表面実装チップを採用したバージョン
なので、厳密にはDD-3でも初代の個体でなければDD-2と全く同じではないと言えるでしょう。
とは言っても基本仕様は同じなので使い勝手等は特に変わりはないのですが…
DD-3 デジタルディレイ レビュー・総評
BOSSには珍しく同じ品番(DDシリーズ)の後継機種と併売となっている面白いモデルです。
BOSSは基本的に後継機種が出ると、前の機種は廃番にしてしまいますので。
こういった例は後はDS-1 DistortionとDS-2 TURBO Distortionくらいでしょうか。
しかしDD-3は、DD-4やDD-5、DD-6ら後継機種と競合し、2015年8月現在も最新機種であるDD-7 Tera Echoと張り合っている状態。
これでよく廃番にならないなぁ、と思います。最新機種に比べ安いという価格設定が絶妙なんでしょうね。
そりゃあ予算を度外視すればディレイタイムも伸びてスペックがよくなっている最新機種がいいに決まっていますが、デジタルディレイって結構高いですからね。
その点、DD-3はBOSSデジタルディレイの廉価版として「 ディレイ欲しいけどそこまでのディレイタイムやらスペックは必要ない 」層のニーズをつかんでいるのでしょう。
実は本機DD-3、デジタル機種とは言ってもまだ完璧なフルデジタルディレイとは言えず、音を繰り返している内にちょっとずつ音が劣化してしまいます。
当時の技術力の限界もあってその辺は諦めての発売となったのですが、その劣化の度合いが却ってアナログっぽい音になってくれて、結果的にデジタル特有のうさんくささを打ち消してくれました。
技術の限界による妥協が逆にいい方向に働いてくれています。
にしても、デジタルディレイという技術力だけで勝負するようなエフェクターの古い機種がが最新機種と張り合っていられるのは尋常ないですね。
なんせDD-3が発売されのは1986年、この記事を書いている2015年の時点で29年前ですから。
前身であるDD-2のことも含めればDD-3は実質30年以上前の機種と言えます。
それでも全く古さを感じないのは、それだけDD-2とDD-3の完成度が高いということでしょう。
約30年前に開発された機種にしてこのポテンシャルの高さ、さすがはBOSSです。
販売期間・スペック・仕様
- 販売期間
- 1986年8月~現行品
- 製造国
- 日本製・台湾製 両方あり
- コントロール
- E.LEVEL、F.BACK、D.TIME、MODE
- MODE
- S.50ms、M.200ms、L.800ms、HOLD
- 接続端子
- INPUT、OUTPUT、DIRECT OUT、ACアダプター
- 消費電流
- 55mA
- 対応アダプター
- PSA-100